認知負荷とは何か?認知負荷を考慮し学習効果を高める方法を解説

認知負荷とは何か?

認知負荷とは、ワーキングメモリに対してかかる負荷のことです。ワーキングメモリの容量は大きくなく、認知負荷が増えすぎると情報を処理しきれなくなります。そのため、学習を計画する際には認知負荷が増えすぎないよう、適度な量に調節する必要があります。

認知負荷の3つの種類

一口に認知負荷と言っても、以下の、3つの種類があります。

内在的認知負荷(intrinsic)

内在性認知負荷(Intrinsic Cognitive Load)とは、取り組む課題そのものに存在する認知負荷のことです。たとえば、3×11を暗算するよりも、3×356を暗算する方が認知負荷が大きくなります。

これは、取り組む課題を変更しない限り、失くすことはできません。負荷の量を適切にするには、他の認知負荷を減らし、できるだけ多くのリソースを内在性認知負荷に割くことが大切です。

適切な認知負荷(germane)

内在性認知負荷をなくすことはできません。しかし、それを適切な大きさに調節することはできます。

たとえば、文字だけで書かれた情報は分かりづらいかもしれませんが、図やイラストを用いると分かりやすくなり、認知負荷が軽減します。また、一度にすべての情報を取り込むのではなく、必要に応じて辞書を開くような学習形態にするのも有効です。このように、内在性認知負荷を適切な方法で処理するときに発生する負荷を、「適切な認知負荷(Germane Cognitive Load)」と呼びます。

余計な認知負荷(extraneous)

余計な認知負荷(Extraneous Cognitive Load)とは、学習内容とは無関係に発生する負荷のことです。

たとえば、教科書がやたらとカラフルで、目がちかちかするようなデザインになっていたら、これは認知負荷になります。学習内容とは関係なく、教材や教師によって脳に負荷がかかり、結果として学習内容そのものに割り当てられるリソースが少なくなるのです。学習をデザインする際には、できるだけこの余計な認知負荷を減らす工夫が必要になります。

参考:https://www.td.org/insights/science-of-learning-101-reducing-the-wrong-types-of-mental-effort-in-instruction

「学習に役立つ負荷」をかけ学習効果を高める方法

前述したように、学習では内在性認知負荷をコントロールし、「適切な認知負荷」の量を適切な程度に抑えることが大切です。では、具体的にどのような工夫をすれば良いのでしょうか。

グラフや図をうまく活用する

文字だけがひたすら羅列された教材を見ると、読む気がなくなってしまう人は多いのではないでしょうか。これは、文字情報が多すぎて過度な認知負荷がかかってしまうからです。

しかし、文字を図やグラフに置き換えるだけで、目を通すべき対象が少なくなり、認知負荷が軽くなります。色分けなどで、視覚的に分かりやすくする工夫も良いでしょう。

ただし、無意味な図やグラフは逆効果です。むしろ視界に余計な情報が入ることで、本当に理解すべきことに割けるリソースが少なくなります。必要最低限に絞って図・グラフを活用しましょう。

コンテンツを分割する

最近では動画投稿サイトで動画を見る人が増加しました。そして、よく見られる動画には、適切な尺があると言われています。あまりに短い内容が薄いと判断されて見てもらえませんが、反対に長すぎると見る気がなくなってしまうのです。

そこで、いくつかの動画に分割して、1つひとつの長さが長くなり過ぎないようにするという工夫が施されています。これによって見る人の負担を減らすと同時に、どの動画で何が解説されているのかを分かりやすくしています。

これは、認知負荷の観点から見ると、コンテンツの分割によって認知負荷を適度な量に調節していると言えます。学習内容をきりの良いところで区切り、一度の情報量が多くなり過ぎないようにしましょう。

複数の方法で情報を伝える

人間は感覚のほとんどを視覚に頼っていると言われています。学習をする際も、テキストにしても動画にしても、人間は視覚を通じて情報を取り込みます。しかし、1つの感覚からたくさんの情報を受け取ると、認知負荷が過剰になりかねません。そこで必要になるのが、情報を伝える方法を増やすことです。

たとえば、スライドで文字やグラフを表示しながら、講師がトークで情報を補足します。この時、話す内容をすべてスライドに記載しておくのではなく、スライドには要点だけを書き、残りを口頭で説明するようにしましょう。こうすることで、情報の一部が聴覚に分散され、認知負荷が小さくなります。

復習の時間を与える

認知負荷を軽減しても、限られたワーキングメモリで学んだ内容をすべて処理するのは困難です。そのため、復習の機会を設け、改めて学習内容を確認できるようにしましょう。授業の最後に軽い振り返りを行うだけでも効果的です。

参考:https://www.td.org/insights/tmi-cognitive-overload-and-learning

「学習とは関係ない負荷」をなくして学習効果を高める方法

学習効果を高めるには、学習とは関係のない「余計な認知負荷」を減らすことも大切です。そのための工夫を紹介します。

余計なアニメーションは使わない

スライド資料でついアニメーションを使いすぎていませんか。上手に使えば物事が伝わりやすくなる半面、不要なアニメーションは余計な認知負荷を増やします。ただでさえ動くものを視線で追いかけるのは大変なのに、説明を理解しながらそれを行うのは大きな負担を伴うのです。

アニメーションがなくても伝わるのなら、基本的には使わないようにしましょう。また、使うのであればアニメーションの動きだけで伝わるようにし、文字情報を極力排除します。もし文字とアニメーションを併用してしまったのなら、どちらかを省けるのではないかと再考してみましょう。

関連する情報同士の配置に気を付ける

グラフや図を活用する際、それらがどのテキストとつながっているのか分からなければ、学習者の集中力が分散されてしまいます。視線を動かす回数も増え、余計な認知負荷が増大してしまいます。

これを避けるには、関連する情報同士を矢印などで分かりやすく結び付けることが大切です。視線を動かさずに済むよう、一か所にコンパクトにまとめて見やすくしましょう。

重要性の低い情報は省く

漏れなく情報を伝えようとして、情報が過剰なスライドや教材を作っていませんか。できるだけたくさんのことを教えたいと思うのは、教育を提供する側としては自然な心理かもしれません。しかし、余計な情報までたくさん盛り込んで伝えると、認知負荷が過剰になり、大切なことまで伝わらなくなります。

補足的な情報は、必要に応じてアクセスできるようにしておくのが一番です。スライドに全てを書かず、「⇒詳細は教科書の234ページ」のように、学習者が興味を持った際にアクセスできるような導線を示しておきましょう。

参考:https://isd.td.org/learning-theories-approaches/science-of-learning-101-6-ways-to-remove-pointless-but-painful-effort-from-instruction/

まとめ

勉強をする際にはワーキングメモリが圧迫されます。ワーキングメモリを増やせればたくさんのことを学べますが、そう簡単に増やせるものではありません。そのため、学習時にはできるだけワーキングメモリの容量を圧迫しないよう、認知負荷を減らすという視点も必要になります。必要な情報を分かりやすく伝え、余計な情報を省くことで、ワーキングメモリという限られたリソースを上手に活用しましょう。

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